筥崎宮の放生会は、露店(屋台)の多さでも知られています。
参道にはなんと約500軒もの露店が軒を連れね、それはそれは大変な賑わいとなります。
露店(屋台)の数
- 約500軒
露店(屋台)の日程・時間
- 放生会期間中(9月12日~18日)
- 店舗により10~12時頃開店、20時~22時頃閉店、最大23時まで
- 見世物小屋・お化け屋敷は18時~22時頃
※最終日は通常18時頃まで
露店(屋台)の場所
- 国道3号線(大鳥居跡)から楼門前にかけての参道沿い・周辺
※直線距離は約600m
ナシもカキも放生会
放生会に関しては昔から「ナシもカキも放生会」ということわざのような決まり文句があります。
「なんで」という意味の方言「なして」と「ナシ(梨)」をかけて、「放生会に行けば、梨も柿も(秋の物なら)何でもそろう」という意味があるのだそうです。
かつて、放生会の露店では、果物を始め季節の物が豊富に売り出されていました。
露店(屋台)の内容(種類)
以下では、過去の放生会の際に出店していたことがある露店(屋台)をご紹介します。
食べ物系の屋台では、ちょっとしたイートインスペースを併設しているお店や、お酒もいただける居酒屋のような雰囲気の露店もあります。
また、韓国屋台や台湾屋台など、海外のグルメを扱う店があるのも特徴的です。
遊戯系では、縁日のような雰囲気の昭和レトロなダーツや射的のテントや、金魚すくいを始め、ウナギ、コイ、カメなど、生き物を扱う露店も多く出店します。
同じ業態の店が集まって出店しており、大きく分けると、参道沿いの「食べ物・飲み物系」、参道右側の「遊戯・見世物小屋系」、参道左側の「植木・陶器」の3つのエリアがあります。
食事系
お好み焼き、焼きそば、皿うどん、たこ焼き、ちぢみ、ラーメン
牛筋煮込み、焼き鳥、串焼き(豚串・牛串)、唐揚げ、手羽先、フランクフルト、
鮎の塩焼き、イカ焼き、肉巻きおにぎり、肉巻き棒、チーズハットグ、焼きとうもろこし
じゃがバター(じゃがバターコーン)、フライドポテト、フィッシュアンドチップス、ケバブ、ポテトもち
中でも、じゃがバターは、マヨネーズ、チーズ、明太子などのソースやトッピングが豊富に用意されている店もあり、人気となっています。
博多ラーメンや、地鶏の焼き鳥・唐揚げ、皿うどんなども、この土地ならではの露店です。
スイーツ・ドリンク系
社日餅(やきもち)、梅が枝餅
フルーツ飴、べっこう飴、カルメ焼き、かすてら、チョコバナナ、冷やしパイン
わたあめ、クレープ、かき氷、トルコアイス、天津甘栗
ビール、日本酒、ジュース、タピオカミルクティー、電球ソーダ
社日餅と書いて「やきもち」と読むこちらは、筥崎宮の名物菓子で、太宰府名物の梅が枝餅に近いお餅です。
白いプレーンタイプと緑のよもぎ餅の2種類があり、中には粒あんが入っています。
お土産にもできますが、露店では焼きたてがいただける場合もあります。
電球ソーダは近年各地の花火大会やお祭りでブームになっています。
照明付きの電球のような形の容器に入ったソーダで、SNS映えを狙うなら、ぜひお試しください!
おもちゃ、アトラクション(遊戯)系
お面、型抜き、ヨーヨー釣り、ボーリング、スーパーボールすくい
射当て、ダーツ、アーチェリー、くじ引き
金魚すくい、めだかすくい、カニ釣り、ウナギ釣り、コイ釣り、カメ釣り、カブトムシ釣り、ヒヨコ釣り
お化け屋敷、ゾンビ村、迷路、氷見世界、世物小屋
殺生を戒めるという放生会の主旨はどこへやら・・生き物を扱う露店が目立ちます。
中でもカメ釣りは、戦前、放生神事の際にカメを池に放していたことに由来しているとされています。
ウナギ釣りに至っては、釣ったらその場で焼いてくれるという仕組みになっています。
そもそも筥崎宮の放生会の「殺生を戒める」という意味合いは、江戸時代頃にはとっくに緩んでいたようで、この後ご紹介する「幕出し」にも見えるように、神社で数々の神事が行われている傍ら、人々が飲み、食い、着飾り、たまの休日を思いきり楽しむ、娯楽の場となっていました。
昔懐かしい、手作り感のあふれるお化け屋敷や迷路などの仕掛け小屋があるのも放生会の露店の特徴の1つで、特に「見世物小屋」は名物となっています。
その他
- 植木、陶器、新しょうが、チャンポン(ビードロ)
参道中央から筥崎宮境内に向かって左側のエリアには植木や陶器の店が集まるエリアがあり、こちらも放生会の名物の1つです。
この機会に、ご家庭のお皿やお茶椀を新調してみてはいかがですか?
たくさん買ったら、値引き交渉に応じておじてもらえるかもしれません。
放生会の名物、チャンポンや新しょうが、おはじきなどについては、当サイトの以下のページ↓でご紹介しています。
筥崎宮「放生会」の名物「チャンポン・おはじき(放生会はじき)・新しょうが」の販売日・場所・値段・歴史(由来)などをご紹介!
放生会名物「見世物小屋」とは?
放生会のアトラクション系の露店では、お化け屋敷と並んで、見世物小屋が名物となっています。
どのようなものなのでしょうか?
営業時間
- 18時~22時頃
入場料
- 大人700円、小中学生500円、幼児300円
内容
- マジック、曲芸、奇術、歌・ダンスなどのショー
※当日の演目は小屋前に掲示されています。
※内部は写真撮影禁止となっています。
見世物小屋とは
見世物小屋とは、寺社の縁日や御開帳、祭りの際に参道や境内に仮設の小屋を建て、芸能や奇術、珍獣、動物の曲芸、からくり装置、貝細工などを披露する興行で、古くは戦国時代末期からあったとされています。
元は中国から伝来した「散楽」と考えられ、「雅楽」に対して「俗楽」とも呼ばれました。
大衆娯楽として人気を博し、江戸時代には最盛期を迎えました。
しかし、子どもや障がい者を見世物にしたものや、暴力的なもの、グロテスクなものなどを見せる見世物小屋も多かったため、明治時代以降、内容や時間、場所が、徐々に制限されるようになりました。
こうしてマイナスイメージが付きまとったことや、テレビや映画の登場で娯楽が多様化したことなどから、かつては日本全国で見られた見世物小屋も数を減らし、現在見られるものは基本的にはすべて「大寅興行社」が興行主の見世物小屋となっています。
粋な博多町人の娯楽!放生会の「幕出し」とは?
神事スケジュールの中に、「幕出し」という言葉が見えます。
これは、博多の町人たちの宴会なのですが、実は明治・大正時代の習慣を復活させたものです。
戦前の「幕出し」
明治から大正の初めにかけて、筥崎宮の放生会の期間中の1日、博多の町人たちが箱崎にやってきて宴会を開くという習慣がありました。
当時は筥崎宮一帯に松原(松林)が広がっており、「千代の松原」「十里松原」と呼ばれていて、そこが宴会会場でした。
町内や店(家)ごとに大きな幕を張り巡らして、飲んだり食べたりして楽しく過ごすのです。
1家族だけでも10人ほど、店員も含めた店ぐるみだと数十人という大所帯のグループもあり、みんなが隊列を組んで箱崎に繰り出す様は、放生会のもう1つの名物でした。
博多から箱崎までは、大体、3㎞から5㎞程度の道のりです。
「長持ち(ながもち)」という入れ物に幕や七輪、食材、食器などを入れて若者たちが担ぎ、時々で休憩しながら歩きます。
その際に歌われた「博多長持唄」は現在も歌い継がれており、「幕出し道中」の際に披露されています。
現在の「幕出し」
戦前の盛大な幕出しは、明治時代の終わり頃に小学校の運動会が筥崎宮からも近い東公園(JR吉塚駅近く)で行われるようになり、幕出しの「遠出して外で行う娯楽」としての役割が終わったのに加え、大正時代の初め頃に松原の松が枯れてしまったことなどから、廃れてしまいました。
現在行われている幕出しは、1975年(昭和50年)に博多町人文化連盟が復活させたもので、連盟の会員ら数十人が参加しています。
提灯や放生会名物の新しょうがを持った男衆と、着物姿に和傘を持った女衆が、筥崎宮の参道を練り歩く「幕出し道中」は、一般の参拝客も見学できます。
「幕出し」の名前の由来である幕については、明治時代の幕出しの際は、町や店それぞれが特徴的なデザインのものを持っていましたが、現在は、博多どんたく、山笠、そして放生会の名物などが描かれた大きなものが1枚、用意されています。
練り歩きの後は松原・・ではなく、屋内の宴会場に移り、郷土料理のごちそうを食べながら直会(なおらい、親睦会)を開きます。
「放生会着物」とは?
幕出しの際、女性たちは新しい着物を着るのが習わしでした。
博多の夏と言えば博多祇園山笠ですが、これは男性の祭りなので、期間中、商店を営む家の女性陣は、大黒柱のいない店の留守を預かっていました。
そこで、山笠の時に店と家を守ってくれた「ごりょんさん(山笠に出る男衆の奥さん)」のため、男たちが放生会の際に着物を新調してやるという習慣があったのです。
このことから、放生会着物(ほうじょうやぎもん・きもん)という言葉が生まれました。
放生会着物を妻や娘に買ってやることは博多の男の務めであり、買えないのは恥とされたほどでした。
年頃の娘のいるお金持ちの家では、放生会前になると新調した着物を外から見える廊下に並べて下げ、男としての経済力、生活力を示しました。
明治時代には1年の呉服の売り上げの約半分がこの放生会着物だったといい、放生会前になると、呉服店の着物はほとんど売り切れていたのだそうです。
幕出しは、休日の少ない商家の娘たちにとっては貴重なピクニックの機会であり、新しい着物を着られるとあって、中には2着、3着と着替えて楽しむ人もいました。
大変華やかな行列と宴で、「人を見るなら宰府の祭り、衣装見るなら放生会」という言葉まであったといいます。
ちなみに、放生会の時期はちょうど秋の入口、衣替えの時期ですので、どんなに暑くても夏ものの薄い着物ではなく、単衣と呼ばれる着物を着たのだとか。
これも、博多町人の「粋」の表れでしょうか。
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